Fahrenheit -華氏-
自信…………
なんて、これっぽっちもあるかぁ!!
俺は柏木さんの前でいつもみっともない。
いつもかっこ悪いとこしか見せられない。
俺が築き上げてきた自信なんて、柏木さんの前じゃ塵も同然だ。
でも
乳白色のカクテルの表面に柏木さんの顔を思い浮かべる。
あの無表情でいつも冷たい柏木さんの顔を。
でも顔はやっぱり好みで…、笑うとすごく可愛い……
涙を流す姿も―――愛おしくて、柏木さんを悲しみに誘う相手から、護ってあげたくなるんだ―――
俺はぐいっとギムレットを一気に煽った。
度数の高いジンが、喉を焼くように熱かった。
もし恋に味があるのなら―――
俺はそれがギムレットに似ていると思う。
ジンのほろ苦さ、ライムの酸っぱさ。
そして喉を焼きつくす程の熱さ。
俺は目を開いて、グラスをトンと置いた。
「やめた―――!!」