Fahrenheit -華氏-

――――


というか……


俺は


プチプロポーズをしたわけで………


キャー!!!!!


思い出しただけでも赤面ものだ。





でもどうやら柏木さんには俺の気持ちが伝わってないようだった。


分かりにくかった??


いやいや、頭の良い人だからそれなりに分かってるだろうと思うけど…


うまくかわされた…?


…………のようには見えなかったケド。


う゛~~~ん…よく分からん……





朝―――


俺はいつものようにIDカードを使って、従業員入り口の扉を開けた。


「おはようございます」


ぬっと背後から人の気配がして、俺はびっくりして飛びのきそうになった。


誰だか確かめるほどでもない。


俺の心に住み着いて、なかなか離れない意中の人の声だった。


でも今日は…声がワントーン低い…


「お…はよ。柏木さん。あれ?ご機嫌ナナメ?」


「部長、IDカード持ってるじゃないですか」


俺は手の中のカードを見た。


しまった!!昨日柏木さんにカードを忘れたとか言い訳したんだっけ。


すっかり忘れてたぜ。


「……会社だと思ってたら上着に入ってたのよ」


俺はあははと笑い、頭を掻いた。


「まぁ紛失じゃなくて良かったですね」


ちょっと苦笑いを漏らした柏木さんに、キュ~ンと心臓が縮まる。


ラブ


俺は心の中でそっと呟いた。







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