Fahrenheit -華氏-
――――
「予約席ぃ!?」
ギャハハと下品な声で笑い転げてるのは裕二。
「し!しかも満席って!!お前断られてるじゃん!」
ひ~…と変な声を漏らして裕二は文字通り腹を抱えた。
…て、前にもこんな光景無かったか??デジャヴ??
そだ…「部長はありませんから」て誘ってもないのに断られたときだ。
「うっせーな」
ブスリと俺は唇を尖らせる。
「クっクク…んで?またここへ避難してきたってことは気まずくなったわけ?」
裕二が笑みでひん曲げた口の端からタバコを抜き取った。
そう、ここは7階の喫煙ルーム。
もっか俺の避難所と化している。
「バカ言え。気まずくなんかなってねぇよ。報告と……ちょっと…相談?」
「相談~?」
う゛
こいつに相談する日が来るとは思いも寄らなかったぜ。
でも相談せざるには居られない。
「……あのさっ…好きな女に電話番号とかアドレス聞き出すときってお前どうする?」
「はぁ!?」
裕二は奇妙な生き物を見るような目つきで俺を見た。
「お前…今更何言ってんの?そんなんさんざんやってきただろ?」
そう…今更―――なんだよなぁ。
って言うか俺は今まで自分から番号を聞き出したことなんて滅多にない。
いつも女から教えてくるから。