Fahrenheit -華氏-
「今更番号?メアド?もういいじゃん。ヤッたんだろ?次も同じように誘えば」
「俺はっ!柏木さんとメールがしたいの!!くだらない電話とかもしたいの!!」
俺は勢い込んだ。
ヤることだけならサルにだって出来る。
ちょっとした世間話や、くだらない冗談、面と向かって伝えられない言葉を……
メールや電話で話したいんだ。
それに、俺はほとんど会社での柏木さんしか知らない。
佐々木やその他大勢の社員たちとほとんど変わらない。
彼女のプライベートを知りたいんだ。
俺しか知りえないことを知りたいんだ……
「ストレートに言えば?番号教えて?って」
「それができりゃ苦労しねぇって。俺……柏木さんを見るとドキドキして上手く喋れなくなるんだ。ガラにもなく緊張してんのかな。なぁ…俺、どうしたらいい?」
困りきって裕二を見ると、こいつは奇妙に顔を歪めていた。
「とりあえず……精神科行ってみたら?」
裕二は冷たく言ってあさっての方を見る。
こいつ…!マジで殺したくなってきた。
俺は裕二の首を絞める振りをすると、裕二は慌てて笑った。
「まぁまぁ落ち着いて、啓人クン。あれこれ考えるよりストレートに聞いた方がぜってーいいって。
ってか、お前は中坊かよ!今時の中学生だってもっとスムーズに番号ぐらい聞きだすぞ」
裕二の言葉に俺の裕二の首を絞める手に力が入った。
「悪かったな、ガキで!」
だって……
俺の時間は7歳のあのときから
止まっているから。