Fahrenheit -華氏-
ちっ!裕二なんかに相談するんじゃなかったぜ。
「……自分で何とかするかぁ」
そう言って携帯を取り出す。
外国製のもので、日本未発売の白い携帯。
偶然にも柏木さんと一緒なんだよなぁ。
揃えて買い揃えたわけじゃないのに、同じものを持っているということに、ガラにもなく運命なんか感じちゃて、俺はちょっと嬉しさを覚える。
だが、携帯の内容はそんなロマンチックなものじゃなくて酷く現実的だ。
携帯を開いてアドレス一覧を開けると、家族や友人のフォルダに混じって“女”フォルダが作成されてる。
このフォルダの中には紫利さんの様に何度も連絡を取り合ってる女もいれば、一度番号を聞いただけでそれ以来音沙汰なし、まで何人もの女のアドレスと番号が入っている。
これはもう用がないから消すか…
“このフォルダを削除しますか?”
“Yes” “No”
俺の指はYesを選択していた。
このままYesを選択して、消すことは簡単だ。
―――だけど……
こんなに簡単にあっさり消してしまってもいいのか?
仮にも一度何らかの関係があった女たちだ。
好きな女ができた。だからって、まるで斬り捨てるように簡単に消してしまっていいのか?
いや―――良くないだろ…
それにこっちが消しても向こうが連絡してきたら意味がないんじゃね?
根元からキチンと清算しなければ―――
何の意味もない。
それに柏木さんをその他大勢の女と一緒にするのがどうしてもできなかった。
彼女は俺にとって特別だから。
きっちりカタをつける。
柏木さんに番号を聞くのはそれからだ。