Fahrenheit -華氏-
■Cat(猫)
「はい、どうぞ。貼っておいてくだい」
そう言って柏木さんは俺に絆創膏を手渡してくれた。
「……柏木さん」
優しいね。
思わずじんわりきてしまう。
俺は―――
柏木さんに触れたいし、彼女に触れて欲しい。
柏木さんに触られるとドキドキするけど、それは決して不快じゃなくてとっても心地良いんだ。
「……柏木さん…貼ってくれない?」
俺はおずおずと柏木さんの横顔を見た。
「え?自分で貼ってくださいよ」
グサリ!
相変わらず厳しいお言葉で…
でも、めげないもんねっ!
俺は絆創膏を持った手をずいと柏木さんに差し出し、
「不器用ですから※」
と言ってにししと笑った。
心の中で「お前は高倉健※か!」と突っ込みを入れながら。
※歳若い読者様は何のことか分からないでしょうけど、高倉健さんは「不器用ですから」の台詞が代名詞になるほど、無骨で無口なイメージがある俳優さんです♪
こんなことを書いている時点で作者である私の年齢がバレつつあると思いますが、お気になさらず!
「しょうがないですね」
柏木さんは呆れたように言ったけど、素直に俺の手から絆創膏を取ろうとした。