Fahrenheit -華氏-
そうこう言ってるうちに、新婦の登場で場が和やかな拍手に包まれる。
アヴェ・マリアが流れる中、バージンロードを歩く花嫁が彼女の父親に手を引かれて、ゆっくりと歩いてきた。
俺たちが拍手をして見守っている中、その手が父親から新郎の桐島へと手渡される。
桐島もマリちゃんも恥ずかしそうに頬を染めていたが
何だかとても幸せそうだった。
賛美歌を合唱し、挙式開始の宣言がされると神父が恭しく二人の前に手をかざした。
誓いの言葉だ―――
「桐島 宏明。汝は花田 マリを妻とし、その健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、
これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか?」
桐島はマリちゃんをそっと見る。
マリちゃんも桐島に応えるように見上げた。
その視線は慈愛に満ちてとても温かいものだ。
「誓います―――」
何でだろう……
式に参加するのは初めてじゃないのに、こんなにも『誓いの言葉』に感動して胸が打たれるのは……
こんなにも胸が熱くなるのは…
隣に柏木さんが居るからだろうか。
それとも、俺が柏木さんを好きだからなのだろうか……
俺もいつか彼女を隣にして、彼女に誓いたい。