Fahrenheit -華氏-
柏木さんは、今も過去を引きずって……いるのかな?
でも心を痛めてる。
それは深い傷になって、癒えることはないのだろうか。
これからもずっと―――
俺じゃダメかな?
俺じゃ君の癒しにならない?
いや
違うな。
俺が柏木さんを求めてるんだ。
『67億人と言われる地球上で、たった二人が出逢えたことは奇跡』
『幸せは届かないと思っていても案外手の届くところにあって。意外に身近にあるものなんです』
ふとその言葉を思い出した。
何てことない…それは、俺が桐島に贈った言葉だ。
幸せは手に届く―――
―――だめだっ!!
そう簡単に諦めれそうにはない!!!
俺は椅子を鳴らして立ち上がった。