Fahrenheit -華氏-
柏木さんがびっくりしてちょっと身を引いた。
俺はそんな彼女の手を引くと、自分の方へ引き寄せた。
そのまま有無を言わさず抱き寄せる。
俺の胸の中で柏木さんが固まったように体を硬直させた。
「ち!ちょっと。ここは会社ですよ!!」
「ん。分かってるけど、今は誰もいないよ?」
俺は柏木さんの頭に手を回すと、そのまま肩の辺りに埋めさせた。
「…っつ!そう言う問題じゃありません」
ぐぐっと力を入れて、俺を押しやろうとするがいかんせん体格の差がある。
柏木さんの押し出そうとする力に俺はびくともしなかった。
そんなに力ないのか…
可愛いなぁ。
なんて思って俺は彼女を抱きしめる手にさらに力を入れた。
柏木さんは諦めたのか、腕をだらりと降ろす。
柏木さんの体はやっぱり華奢で、俺が力を入れたら簡単に折れそう。
だけど、この小さな体に俺もびっくりさせられるようなエネルギーがいつも満ち溢れてる。
そんなパワフルなところも好きだ。
何でも自分で解決しようと、向かっていくその姿は勇ましいとも思える。
だけど
たまに俺に見せる脆い部分を、俺は受け止めて
そして彼女を悲しませる何かから守ってやりたいんだ。