Fahrenheit -華氏-
裕二は長いため息を吐くと、
「俺がどう?って聞いたら、柏木さんのことに決まってンだろ?順調か?」
横柄に言って腕を組む仕草は、いつもの裕二だった。
背もでかけりゃ態度もでかい。
「あ~…順調?っていうかふつー。進展は何もない」
「あ、そう。んじゃ、可哀想なお前にプレゼントをやるよ」
そう言って裕二はバーバリーの黒い鞄の中から、一つの紙包みを取り出した。
「プレゼントォ?お前から貰うものっていっつも変なもんばっかだもん」
とか言いつつも、素直に手が出る。
大きさ的に本か何かか、と思って紙包みから中身を出して俺は顔をしかめた。
エロDVDだ。
「なんだよこれは!いるかよ!!」
俺は思わず怒鳴った。
ってか間違いなくいつもの裕二だ。こいつぁこうゆう男だ。
「会社に持ってくんなよな!」
「お前の為にわざわざ持ってきてやったんだろが。感謝しろ」
そう言って恩着せがましく俺の肩に腕を回してくる。
「誰ぁれが頼んだよ」
「だってお前、最近ご無沙汰だろ?それでも見て慰めろ」
慰め……って………
「いるかよ!俺が興味があって見たり、触わったりしたいのは柏木さんの裸だけだ!」
俺の言葉に裕二がイタそうに顔をしかめると思っていた。
だって以前の俺だったら考えられないことだったから。
でも俺の言葉に裕二はちょっと苦笑いを漏らして、
「お前今の台詞。変態っぽいぞ」と小さく答えただけだ。
ホントに……どうしちゃったの?お前……