Fahrenheit -華氏-
*Side Ruka*
.。・*・。..*・ Side Ruka ・*..。・*・。.
それはつい一週間程前のこと。
いつものように帰宅して、バッグをソファに投げ出すと携帯が中から転がり出てきた。
左上のランプが青く点滅している。
不在着信があったようだ。
のろのろと携帯に手を伸ばして、着信を確認すると
不在着信:M となっていた。
留守録の表示が出ていて、あたしは目を細めた。
わざわざあの人の声を聞きたくもなかったけど、もしかしてユーリに何かあったのかということだけが心配でメッセージを聞く。
1件ノメッセージヲオ預カリシテオリマス 午後8時09分
機械音が流れて、
『Hey.It's me.(やあ。俺だよ)』
あの男の声が聞こえてきた。
『Good morning…guess again.(おはよう…じゃないな)It should be said, "Good evening". (こんばんは、というべきか)』
いつも通りの声。いつも通りの口調。
『The distance with you is long. (君との距離は遠いな)』
だけどこの言葉はしみじみと、現実を噛み締めているようだった。
だから何?
とあたしの中で妙に冷めた部分が嘲笑する。
でも実際にはあたしは笑わなかったし、苦い表情もしなかった。
ただ機械的に、音を耳に流すだけ。