Fahrenheit -華氏-

4日経った。


でも裕二は何もアクションを起こしていない。


随分余裕だな。


始終一緒にいる俺でもかなり手こずってるってのに。


あいつ…何か企んでやがるのか?



「部長」


柏木さんの声で、


「はい!何でしょう!」


と、ほとんど反射的に返事をし、俺は肩をびくつかせた。


「上着のボタン……取れかけているのですが」


そう指摘されて、俺はスーツの上着の前を見た。


「そこじゃありません。ここです」


柏木さんは何のためらいもなく、俺の腕を取ると袖を指指した。


び……くり、した。


きっと、柏木さんにとっては何の意識もなかったんだろうけど、


予告もなしにいきなり体に触れられるのは……



ちょっとイイかも♪


なんて考えてる場合じゃない。


「あ~、ホントだ。取れそう。いいや、ちぎっちゃえ」


どーせ袖のボタンが一個無かったことで、これは飾りだし誰も気づきはしない。


「脱いでください」


突然言われて、俺は目を点にした。




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