Fahrenheit -華氏-
早口で近況報告がなされて、どうやらユーリは平穏に暮らしているようだ。
それだけ聞いてあたしはほっと胸を撫で下ろした。
『―――Hey Ruka.I want to start over as a family again with you .(また君とやり直したいんだ)
I just can't let it go(俺はどうしても諦められない)』
あたしは目を開いた。
携帯を握る手に思わず力が入る。
『There is something I want to discuss(君と話し合いたい…』
最後まで聞かずにあたしは留守録を強引に切った。
携帯を閉じて、ローテーブルに乱暴に放り投げる。
「今更―――」
あたしは閉じた携帯をじっと見つめた。
「今更何言ってるのよ……」
全身から力が抜け、背を深くソファに預けた。
だけど瞬時に力が入って、あたしは両腕を振り上げた。
「冗談じゃない!!!」
テーブルを叩いたせいで、ガラス製の灰皿が跳ね上がり、またテーブルにガシャンと派手に音を立て、もとにあった場所から数センチ離れて何とか落ち着いた。
握った拳が強張っている。
僅かに腕が震えていた。
怒りから?それとも悲しみから―――?
「It's too late.(もう遅い)」
一言呟いて、あたしは再びソファに背を預けた。