Fahrenheit -華氏-



黙っていればそこそこハンサムなのに、大抵挙動不審で、いい加減。


でも


笑顔は屈託なく―――まるで少年のようだ。


喋らないと歳相応に見えるのに、笑うと五歳ほど若く見える。


不思議な笑顔だ。



いつも静かに微笑を湛える“あの人”とはまるで違う笑顔。


太陽のように明るい笑顔。





あたしにはない明るさ。







「そだ。柏木さんにも一本ど~ぞ」


「ドリンク剤……」部長に手渡されたものを見て目を開いた。


「いや!疲れてたみたいだからっ。ごめん、こんな色気のないもん渡して」


また挙動不審。



でも



おもしろい。


見ていて飽きない。観察日記をつけたら楽しいかもしれない。


気が紛れるし、そうしようかな。



そんなことを思って


「ありがとうございます。早速頂きます」


あたしは栄養ドリンクのキャップを開けた。









< 384 / 697 >

この作品をシェア

pagetop