Fahrenheit -華氏-
黙っていればそこそこハンサムなのに、大抵挙動不審で、いい加減。
でも
笑顔は屈託なく―――まるで少年のようだ。
喋らないと歳相応に見えるのに、笑うと五歳ほど若く見える。
不思議な笑顔だ。
いつも静かに微笑を湛える“あの人”とはまるで違う笑顔。
太陽のように明るい笑顔。
あたしにはない明るさ。
「そだ。柏木さんにも一本ど~ぞ」
「ドリンク剤……」部長に手渡されたものを見て目を開いた。
「いや!疲れてたみたいだからっ。ごめん、こんな色気のないもん渡して」
また挙動不審。
でも
おもしろい。
見ていて飽きない。観察日記をつけたら楽しいかもしれない。
気が紛れるし、そうしようかな。
そんなことを思って
「ありがとうございます。早速頂きます」
あたしは栄養ドリンクのキャップを開けた。