Fahrenheit -華氏-

くっそーーー!!!


ついてねぇ!!!


冗談じゃないぞ!


様々な悪態を心の中でつきながら、俺は取引業者に電話を掛けまくっていた。


無理を承知で、納期と発注個数を伝える。


もちろん先方は難色を示す。


そこを何とか!


俺は頼み込む。


『まぁおたくとは古い付き合いですからね。今回だけですよ』


チン!


と電話を切ってほっと胸を撫で下ろす。


これで3社。


あと15社もある。


今日は日を超えそうだ。


うんざりしながら、次の業者へ電話をかけようと受話器を取ったところで


「お疲れ様です」


と聞きなれた声が聞こえてきた。





え……?なん……で……?




「柏木さん………」




俺は幻を見たかのように目をぱちぱちさせて、彼女の姿が幻で消えてしまわないか確認する意味で目を擦った。






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