Fahrenheit -華氏-
大体にしてこいつが4日も行動を起こさなかったことがおかしい。
絶対何か企んでる筈。
そうはさせるかっ。
「あ~そうそう、外食部の桐島(キリシマ)今年の夏結婚するらしいぜ」
空席になった柏木さんの席に勝手に腰を降ろしながら、裕二がのんびりと言い出した。
てかそこに座るなよ。
佐々木の席も空いてるだろ?(ちなみに佐々木は外回り中デス)
桐島とは外食事業部の営業で、俺と裕二の同期だ。
入社当時は三十人近くもいたのに、四年経って残ったのは俺と裕二、それから秘書課の綾子に外食事業の桐島だけだった。
まぁ、大手企業とは言え給与に見合わないなかなかハードな世界だ。
四人残ったこと自体奇跡だな。
「へぇ、夏に……随分急だな」
「女にガキができたらしい」
「へぇあの真面目な桐島がねぇ。仕組まれたんじゃねぇの?女の方が結婚したくて」
俺はいししと下品に笑った。
「かもなぁ。相手24って言ってたし、一番焦る頃だよなぁ」
24ってことは柏木さんと同じ歳か……
柏木さんは結婚したいとか、考えたことがあるのかな。
「ま、どっちにしろご愁傷様ってこったな。結婚は墓場だ」
俺は笑いながら手を合わした。
「だよなぁ。俺も同感」
裕二も笑った。
世の女たちがこの会話を聞いていたら、刺し殺されっかもなぁ。