Fahrenheit -華氏-
「……え?なんでまた…」
俺の手を握った柏木さんの手にぎゅっと力が入った。
「あたし部長の優しさに甘えてるんです。―――いいえ、利用してるって言ったほうが正しいのかな?」
利用って……そんな…
「そんなこと?別に全然かまわないよ。俺だって柏木さんに甘えてるところあるし、そんなんお互いさまじゃない?」
俺はちょっと笑った。
柏木さんも律儀だな。そんなん誰だってあるじゃないか。
「利用っつーったら、俺は裕二や佐々木のこと利用しまくりだ。あいつらはその度にぶつぶつ文句言うけど、何だかんだで結局は俺に付き合ってくれるよ。
その反対であいつらだって俺を利用することがあるんだぜ?」
それでも、なんて言うの?何だかんだで俺は結構楽しい。
柏木さんの手を握る力がふっとゆるまった。
俺を見上げると、はにかんだように笑う。
「部長はお二人のこと随分信頼されてるんですね」
「信頼……まぁそうだな…」
俺はちょっと考え込んだ。
「俺は柏木さんのこともすっげー信頼してるよ?」
にこっと笑い、手をちょっと引き寄せると柏木さんは恥ずかしそうに顔を逸らした。
「利用ついでに、コンビニ寄っていいですか?」
あ…照れてる。
可愛いなぁ、柏木さんは。
可愛いなぁホント。