Fahrenheit -華氏-
■Cigarette(タバコ)
別にタバコを吸う女は嫌いじゃないけど。
ちょっと意外、というか……イメージじゃないって言うか。
細くて長い人差し指と中指で挟んだタバコは女もののメンソールだ。
嗅ぎなれない風変わりな匂いがする。
柏木さんは俺の登場にも動じず、タバコを吹かせている。
何て言うか……
何やっても様になるっていうか、彼女は完璧に美しい。
「あの、何か…?」
俺がじっと見ていたからだろうか、柏木さんがちょっと顔を上げた。
「あ、いや…ちょっと意外だなって思って。喫煙歴長いの?」
見りゃ分かる。
この鳴れた吸い方はちょっと前に吸い出したそれとは違う。
「一時期禁煙してたんです。4年ほど。でも最近また始まっちゃいましたね」
「へぇ長い間禁煙してたのに、何で」
俺もポケットからタバコのケースを取り出すと一本取り出した。
「ちょっと……色々疲れてたから…」
そう言った柏木さんの顔は無表情で、まるで疲れを感じさせられなかったけど、きっと彼女も何かしら悩みはあるんだろうな。
癒してあげたい……
って、何考えてるんだ!俺っ!!!