Fahrenheit -華氏-
ミルク色をしたローブの袖から、白い腕が覗いている。
まるで造りもののような、精巧で滑らかな肌だ。
その腕には、バスルームで見た絆創膏が貼ってあった。
その腕をそっと手に取る。
ねぇ柏木さん……
こんな場所どうやってガラスで怪我するの?
どう考えたって、人為的としか思えない。
Why do you betray me?
―どうしてあたしを裏切るの?-
どうして?
どうして……
彼女の涙の跡が
絆創膏で隠された傷跡が
そう物語っていた。
俺は
もっと重大な何かを見落としている気がする―――
根本的な何かを
見間違っている気がする。