Fahrenheit -華氏-
綾子から会社のメールで個人的な用件で入ってくるのは珍しいことだった。
プライベートで飲みに誘われたり、誘ったりするときはプライベート用の携帯でやり取りしている。
でも、社内メールでってことは、何かあるのかな?
桐島のことか?
最近話を聞いてないけど、あいつまだ諦めてないのかな。
それとも裕二とのこと?
前、喧嘩してたもんなぁ。こじれたままなのか…?
そんなことを考えながら、あっという間に時間は過ぎていった。
定時の18時を過ぎると、緑川さんはそそくさと帰っていく。
19時過ぎには佐々木が。
柏木さんもこの日は珍しく19時40分に、俺のメールに日報が届いた。
いつもは23時過ぎなのに。
「あれ?今日は早いね」
さりげなく腕時計を見て、柏木さんに視線を移した。
「今日はちょっと用事があるんです」
「用事って…まさか、デート?」
探るように目だけを上にあげると、
「まぁ、そんなものです」と柏木さんが相変わらずけだるい感じで面倒くさそうに答えた。
なぬ!!?
デートだとぅ!!?