Fahrenheit -華氏-
じゃなくて。
小さい頃やっぱ俺は柏木さんと会ってたわけだ。
それも「べったり」と言う程、かなり親密な(?)仲であったってことで……
俺の初恋は―――
柏木 瑠華?
そんなことを考えて顔を青くしていると、
「会長はあんたと違ってジェントルマンなのよ。そんなつもりじゃないわ」
「ジェ…それは見た目だけだ!紳士を装ってるだけだっ!!お前はいいのかよ!?お気に入りの親父が他の女と食事だぜ!?」
「……別に、いいわよ」
「…何だ、お前やっぱ桐島のこと諦めてなかったんだな。話ってのはそのこと?」
「ちょっと違う…」
綾子は少しだけ顎を持ち上げると、指を当てた。
黒い長い髪が肩で揺れる。
あれ?
こいつ今日なんか雰囲気違う。
いつもまっすぐのストレートなのに、軽く巻いていあるし、白いスーツの下に着ているインナーも淡いピンク色をしていた。
化粧も…いつもより大人しめ…
「何だ、今日は雰囲気違うな。俺はそっちの方が好き…」
と言いかけては!となった。
「…綾子、まさか……。いやいや、俺には柏木さんという大切な女が」
「誰があんた仕様だって言ったのよ!!」
綾子がムキっと怒った。
「え?違うの??だって俺の好み……」
と言いかけてまたもはっとなった。
俺の好みと言うことは、つまり“あいつ”も好みだと言うことだ。