Fahrenheit -華氏-



サー……


と俺の顔から血の気が引いた。


そ…そうだった……




結婚、そして離婚の事実で俺はすっかりそのことを忘れていた。




『もう二度と恋なんてしない』



とも言っていた。



まあマックスとの過去話を聞いたらそう思うのも当然だと思うケド……



柏木さんとそうなることの前提として、



俺たちの間の取り決め……ルールが存在している。





はぁ



大きくため息を吐きながら俺はビールのジョッキに口付けた。



「ま、まぁそう気を落とすな?何とかなるよ」


「そうそう、何て言ったって四六時中一緒に居るわけだし?あんたにも良いところがあるってその内柏木さんだって気付くわよ」


くっそぅ


人ごとだと思って言いたい放題。


「お前らはいいよな~毎日顔合わせて、おまけにラブラブだしぃ」


ちょっと拗ね気味に言って、俺はいじいじとテーブルの上で指をこねくり回した。


そんな俺の様子を見て二人はまたも同じタイミングで顔を見合す。


も~いいよ、勝手にやってくれ…



「とは言っても社内恋愛ってなかなか難しいのよ~」


と綾子がちょっと苦笑しながら俺の肩に手を置いた。





< 466 / 697 >

この作品をシェア

pagetop