Fahrenheit -華氏-
俺の腕の中で柏木さんが固まったように身を強張らしたのが分かる。
困らせてるのは分かる。
ルール違反だということも分かる。
だけどこの気持ちは
止められない。
柏木さんは俺の胸に手を着くと、そっと体を離した。
目を開いて俺をじっと見据えてくる。
その瞳の奥にある光が、動揺して揺れていた。
そして柏木さんも同様、俺の目の中にある気持ちを感じ取ろうとしている。
「あの……それは…いつもの冗談ではなく、本気で………?」
俺はあなたに今まで伝えてきた気持ちの中で、冗談で言ったことなんて一度もないよ。
「真剣に―――
俺は君を好きなんだ」
俺は真正面からまっすぐに柏木さんを見つめて、はっきりと言い切った。
「あなたを愛している」
もう一度囁くと、柏木さんは眉を寄せた。
―――それが何を意味しているのか、
俺には分かってしまった。