Fahrenheit -華氏-
*Side Ruka*
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部長は頭が良い。
いつも冗談ばかり飛ばしていて、会話上手。
でも仕事に対しては真面目で努力家。
さりげなく優しくて、いつもあたしを気遣ってくれる。
あたしが悲しいときはさりげなく近くに居てくれて、さりげなく心を穏やかにしてくれる。
あたしの触れて欲しくないところは突っ込んでこないし、知られたくないことは彼独特のテンポでスルーしてくれる。
女性の扱いに慣れてると言ってしまえばそれまでだけど、あたしには彼のその独特な距離感が
すごく楽だった。
まるでペットのように纏わりついてくる部長のことを、時々可愛いと思うことはあった。
好きか嫌いかと問われれば
たぶん好き。
「真剣に―――俺は君を好きなんだ
あなたを愛してる」
昨日そう言われた。
まさか部長があたしをそんな風に想っていたなんて……
冗談か…それともいつもの口説き文句かと思った。
だけど
彼の視線はすごく真剣で、いつもの余裕は微塵も感じられなかった。
でも何であたし?
女の人なら他にもいっぱいいるじゃない?
はっきり言ってあたしは部長に対して優しくもないし、女らしくもない。
可愛げのない女だと思われてると思ってた。
それでも部長はめげずにあたしの傍に居てくれる。
今まで、彼の見せる愛情は、女という生き物に対するものだと思ってた。
だけど昨日……
「これだからジュニアは」
経理部長の一言で酷く傷ついている部長を見て、
大きなはずの部長がとても小さくて頼りない存在に見えて……
あたしが、守ってあげたい。
そんな風に思ったの。