Fahrenheit -華氏-

*Side Ruka*



.。・*・。..*・ Side Ruka ・*..。・*・。.




部長は頭が良い。


いつも冗談ばかり飛ばしていて、会話上手。


でも仕事に対しては真面目で努力家。


さりげなく優しくて、いつもあたしを気遣ってくれる。


あたしが悲しいときはさりげなく近くに居てくれて、さりげなく心を穏やかにしてくれる。


あたしの触れて欲しくないところは突っ込んでこないし、知られたくないことは彼独特のテンポでスルーしてくれる。


女性の扱いに慣れてると言ってしまえばそれまでだけど、あたしには彼のその独特な距離感が


すごく楽だった。



まるでペットのように纏わりついてくる部長のことを、時々可愛いと思うことはあった。





好きか嫌いかと問われれば



たぶん好き。






「真剣に―――俺は君を好きなんだ


あなたを愛してる」





昨日そう言われた。



まさか部長があたしをそんな風に想っていたなんて……



冗談か…それともいつもの口説き文句かと思った。



だけど



彼の視線はすごく真剣で、いつもの余裕は微塵も感じられなかった。



でも何であたし?



女の人なら他にもいっぱいいるじゃない?




はっきり言ってあたしは部長に対して優しくもないし、女らしくもない。


可愛げのない女だと思われてると思ってた。


それでも部長はめげずにあたしの傍に居てくれる。





今まで、彼の見せる愛情は、女という生き物に対するものだと思ってた。





だけど昨日……





「これだからジュニアは」






経理部長の一言で酷く傷ついている部長を見て、



大きなはずの部長がとても小さくて頼りない存在に見えて……




あたしが、守ってあげたい。





そんな風に思ったの。










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