Fahrenheit -華氏-



さすがにこのまま会社には行けない。


頭がぼうっとするし、立っていてもふらふらする。


時間を見計らって会社に電話すると、佐々木さんが電話口に出た。


風邪を引いたので、今日一日お休みを頂きます。と伝えると、


「お大事にしてください」と優しい気遣いの言葉が返って来て、あたしはほっとしながら電話を切った。


携帯を握りしめ、ちょっとため息。


出てくれたのが佐々木さんで良かった。


部長だったら、気まずいから。





あたしはベッドから這い降りると、リビングのサイドボードの中にある救急箱の中をまさぐった。


市販の風邪に効く小さな薬の瓶が入れてある。


用法どおりに服用して、再びベッドに潜り込む。



とりあえず寝よう……



体調を整えるのが先決だ。




あぁ、社会人失格。



何でこのタイミングで風邪引くかな…あたし。


でもとりあえず今日一日は、部長と顔を合わせずに済む…



あたしってサイテー



部長を傷つけたことと、まだ自分の気持ちが分からないことに不安と苛立ちを募らせ、あたしは目を閉じた。









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