Fahrenheit -華氏-



どれぐらい眠っただろう…


ピンポーン


インターホンの音で、目が覚めた。


誰か来てる……?


でも、起き上がるのも億劫で、あたしは布団を引き上げた。


セールス…はないな。ここのコンシェルジュがそう簡単に通さないだろうし、宅配便だろうか。


それもないな。それも彼らが受け取ってくれる。


専用の電話で報せてくれる筈だから。


じゃぁ来客?


だけど今のあたしに客の相手をしている余裕はない。


大体あたしに客なんてない。


日本に友達もいないし、会社の人には住所を教えてない。

(人事部には必要な書類は提出してあるけど、そこから情報が洩れることはまず無いし)





ただ一人を除いては―――




あたしは目をこじ開けた。


「まさか……」


ピンポーン…


もう一度呼び鈴がなって、あたしはベッドから抜けた。


リビングに備え付けてあるカメラフォンを覗くと、




やっぱり……





「部長………」




あたしは画像を見やったまま、その場で固まった。








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