Fahrenheit -華氏-
「あの…」
「あのさっ!!」
沈黙を破ったのはほぼ同時だった。
あたしは目を開いて部長を見た。部長もその綺麗な瞳であたしを見下ろしている。
「…あ、柏木さんからどうぞ…」
「いいえ。部長から…」
部長はちょっと考えるように少しだけあたしから視線を逸らすと、天井を見上げた。
んー…っと小さく唸って、考えがまとまったのかあたしを再び見下ろす。
綺麗な瞳があたしを捉えた。
あたしは
左右で色が違うこの瞳が好き。
こう考えたら、部長の好きなところ結構ある。
好き―――
「俺さ!やっぱ諦められないから!!どうしても、この気持ちに終止符が打てない」
あたしは目をまばたいた。
まさか
こんな風に言われるとは想像もしてなかったから。
「俺考えたら、柏木さんに好きって言ったの一回こっきりなんだよね。
俺のこともまだはっきりと知ってもらってないし。
やれること全部やってない気がする。それで諦めるとか、そんなの嫌だったから。
たくさん気持ちぶつけて、それでもダメだったら諦めるから…」
あたしをまっすぐに捉える視線は淀みがなくて、まっすぐだった。
綺麗な瞳。
往生際悪いかな……
強気な発言のあとにそう言って、急に弱気になっておどおどしてる。
そんなとこ可愛いと思いますよ?