Fahrenheit -華氏-
■Try again(もう一度)
失恋しても、朝は容赦なくやってくる。日常は俺を待ってはくれない。
現実は多忙なスケジュールで詰まっている。
俺はいつもどおり朝早くに出社した。
一晩考えた。
考えて、考えて……ようやく浅い眠りについたと思ったら、夢の中には柏木さんが現れた。
目が覚めると、俺は泣き出したいほどの悲しみで押しつぶされそうだった。
忘れなければ……
今日―――柏木さんと顔を合わせたらどんな顔をすればいい?
ちゃんと挨拶できるだろうか?
ちゃんと顔を見られるだろうか。
ちゃんとこの気持ちに終止符を打つことができるだろうか。
そんなことを色々考え不安な面持ちで仕事を始めたものの……
当の柏木さんは病欠。
初めてのことだった。
まさか!俺が変なこと言ったせいで、仮病でも使って避けてる??
いやいや、それぐらいであの人が凹むとは思えない。
じゃぁあ何か……
彼女に何かあった―――!!!
色々考えて、俺は見舞いに行くことを決意。
19時に仕事を無理やり終え、六本木に向かった。