Fahrenheit -華氏-
「ファーレンハイトォ?ふぅん、何かかっこいい名前。意味ってあるの?」
どうせ気になるのはネーミングだけだろ。意味なんて知ってどうする?
俺は曖昧に笑ってタバコを吹かせた。
意味は
華氏―――
女がじっと俺の顔を見上げる。
少し媚びたような甘い表情。
単純な女は好きだよ。扱いやすいから。
でも本気になるな。
俺はいつだって遊びだ。
「啓人の目って左右で色が違うんだね」
俺はちょっと目を見開いて、わずかにまばたきをした。
昨日は照明を落とした室内が暗くて気付かれないと思ったが。
そう、確かに俺の右眼は黒色で、左眼はブルーがかった淡いグレーをしている。
劣勢遺伝
俺は日本人の父親の目を右眼に、アメリカ人とのハーフだった母親の目を左眼に
それぞれ血を受け継いだみたいだ。
小さい頃はこれを理由によく苛められもしたが、今は逆に「きれい」や「変わってる」という理由で女からモテる要素に成り代わっていた。
オッドアイ
なんて言うと聞こえはいいが、虹彩異色症という名の歴記とした病だ。
病とは言うが、単に色が違うだけ。
見え方も、何も変わらない。
偶然の産物に感謝だぜ。