Fahrenheit -華氏-
俺は写真の両端を握って目を剥いた。
どう見たって190cm以上はある大柄な体系の黒人。
センスの良いタキシードを着ているけれど、その上からでも分かる盛り上がった筋肉。
白い歯を見せて笑ってはいるが、人相は最悪。
む……無理無理無理…!
俺、力じゃこいつにぜってぇ勝てねぇ!!!
目を開いて無言で写真を見ていると、柏木さんがそっと覗いてきた。
「あ、違った。それはボディーガードのティムです」
「おい!」
俺は素で柏木さんに突っ込みを入れた。
ふぅ
でも良かったぁ。
こんな奴と戦っても絶対勝てる気がしないんだよねぇ。まぁ力で、ってことだけど。
それにしてもボディーガード雇うなんて、やっぱ世界レベルの金持ちは違うなぁ、なんて考えてると、
「こっちが正しいものです」
今度こそ柏木さんはしっかり確認して、俺に手渡してきた。