Fahrenheit -華氏-
負けたぜオーランド――――……もとい、マックス……
こんなイケメン相手にしてたら、そりゃ俺なんてかすむよなぁ。
柏木さんの背中に回したマックスの、袖から覗いた手の甲に黒い絵柄がちらりと見えた。
確認するまでもなく、それが柏木さんの腕に彫られたタトゥーと同じものだと分かった。
そして左手で軽く掲げたシャンパングラスを持つ薬指には―――
キラリと指輪が光っていた。
この男は柏木さんと多くを共有している。
タトゥー、指輪……
二人の間に流れた愛の時間がそれらを物語っていた。
相変わらずの微笑を湛えて、柏木さんがこちらを見ている。
俺を―――見ている。
そしてその隣には……まるで勝ち誇ったような(実際そうじゃないかもしれないけど)顔をしてマックスが同じように微笑を湛えていた。
『Deprive if it is possible to deprive. (奪えるものなら奪ってみろ)』
そう挑発されているようにも見えた。
―――お似合いの
二人だった。