Fahrenheit -華氏-
何年ぶりかに流した涙は、とめどなく流れ落ち、俺はその止め方を忘れてしまっていた。
それも好きな女の前で、泣くなよなぁ。
柏木さんも引くっつの。
数分後に涙は止まった。
すん、と鼻を啜ると俺はちょっと笑ってみせた。
「かっこわり。ごめんな。変なとこ見せて」
柏木さんは無言で首を横に振った。
優しいな、柏木さんは…
俺は深呼吸を一つすると、改めて真正面から柏木さんの目を覗き込み、彼女の手を両手で包んだ。
「俺……柏木さんの過去を知れて良かった。
柏木さんのこと知れて良かった。
そして尚更―――好きになった。
俺は君を裏切らない。絶対に……
俺は柏木さんを幸せにする。
約束するよ
だから―――もう一度信じてみて?男っていうものを……」
俺の二度目の告白に、柏木さんは目を開いて、それでもまっすぐに……俺から目を逸らさなかった。