Fahrenheit -華氏-



何年ぶりかに流した涙は、とめどなく流れ落ち、俺はその止め方を忘れてしまっていた。


それも好きな女の前で、泣くなよなぁ。


柏木さんも引くっつの。


数分後に涙は止まった。


すん、と鼻を啜ると俺はちょっと笑ってみせた。


「かっこわり。ごめんな。変なとこ見せて」


柏木さんは無言で首を横に振った。


優しいな、柏木さんは…


俺は深呼吸を一つすると、改めて真正面から柏木さんの目を覗き込み、彼女の手を両手で包んだ。





「俺……柏木さんの過去を知れて良かった。


柏木さんのこと知れて良かった。






そして尚更―――好きになった。






俺は君を裏切らない。絶対に……



俺は柏木さんを幸せにする。



約束するよ



だから―――もう一度信じてみて?男っていうものを……」





俺の二度目の告白に、柏木さんは目を開いて、それでもまっすぐに……俺から目を逸らさなかった。









< 520 / 697 >

この作品をシェア

pagetop