Fahrenheit -華氏-
ぐっ!!
俺は飲んでいたお茶を喉に詰まらせそうになった。
同じように上品に両手を添えて、お茶を飲んでいた柏木さんはちょっと楽しそうに睫を伏せ、
「ええ。まぁ」とさらりと答えた。
ブーーー!!
今度こそ、俺はお茶を吹き出しそうになった。
寸でのところで何とか飲み込んだけど、なんっつー会話!
しかも!!嬉しいケド柏木さんも正直に答えないでよっ。
「へぇ。お相手はどんな方??」
ちらりと、含みのある視線で香坂さんが俺を見る。
やっぱり!!
香坂さんはどうあっても俺と柏木さんをくっつけたいようだ。
それはそれで嬉しいんだけど、どうもやりにくい。
「どんなって…元気が良くて、頭が良くて、でもちょっとやんちゃで寂しがりな子なんです」
柏木さんはにっこり答えた。
子って……
「何だぁ、ペットのことですかぁ」
香坂さんはがっかりしたようにちょっと苦笑いを浮かべた。
何だ…ペットのことか…。俺もちょっとがっかり。
でも…かわし方がうまいな……
だけど、柏木さんペット飼ってないよなぁ。