Fahrenheit -華氏-



「懇親会?」


わーーー!!待った!柏木さんにはまだ話してないんだって!!!


「え…ご存知ないんですか?今度、うちの経理部と外資物流部で懇親会って言う名目の飲み会するんですよ?」


瀬川、待て!!俺はその口を今すぐ塞いで、エレベーターから放り投げたい衝動に駆られた。


「懇親会…飲み会…?どういうことです?」


柏木さんがちょっと眉間に皺を寄せ、俺を見上げてくる。


って言うか睨まれてる?


ポーン…


運よくエレベーターが8階に到着した。


「じゃ、じゃぁな瀬川!その件に関してはまた連絡するっ」


俺は訝る柏木さんの背中を無理やり押して、エレベーターから降りた。





―――



「え!?瀬川さんが緑川さんを??」


隣でタバコを吹かしながら、柏木さんが目を剥いた。


「しー!まぁ好きとかじゃないだろうけど、ちょっとお近づきになりたいって感じだ。ありゃ」


俺もタバコに口をつける。


ふぅ、とため息と共に煙を吐き出した。


「それで飲み会の企画を?」


「ああ、まぁなぁ。瀬川にはホントに世話になったし。向こうも経理部の女の子たち連れてくるって言ってたから、佐々木なんか結構喜んでるよ。それに瀬川と緑川さんがくっついてくれれば、俺としても助かる」


柏木さんは立てた膝の上で頬杖を付いて、ちょっと半目で俺を見据える。


「そんなにうまく行きますかね」


う゛!確かに……







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