Fahrenheit -華氏-

■Date(デート)



待ちに待った土曜日。


今日は午後から柏木さんとデート!!♪


と言う訳で、緑川とのいざこざは一旦保留。って、俺の中で、だけどね。


今日はスーツじゃなくて私服。


休日出勤にスーツ着用との決まりはない。だから社員は私服で出社する人間も多いわけだが、急な打ち合わせとかで外出や来客用に俺はいつもスーツを着て出社していた。


だけど、綿密なスケジュール調整で今日は外出予定もなければ、来客予定も入っていない。


だから私服で出社!

白いV開きのシンプルなTシャツの上に、茶色とオレンジ色のチェック柄の皺加工シャツ。程よく色落ちした細身のジーンズに、ターコイズをあしらった革のベルトをチョイスして。


…って、柏木さんがどんな服装が好きとか分からなかったから、とりあえずカジュアル路線で行って見ようと散々昨日の夜考えたわけだ。


エレベーターホールでエレベーターを待っていると、綾子と偶然会った。


こっちはいつもと同じきっちり決まったスーツ姿。


「あら、啓人。珍しいわね、私服で出社なんて」


といいながらじろじろと無遠慮な視線で俺を眺める。


「あんた、悔しいけどやっぱ何着ても似合うわ。だてに顔だけが取り得ってわけじゃないのね?」


「ふっふっふ。何とでも言え。俺はお前に憎まれ口にも動じないほど、今は超☆ご機嫌なんだから」


ちっちっと指を振って、綾子を見下ろす。


綾子は面白くなさそうに腕を組んだ。


「なぁに?これからデートなの?柏木さんは諦めたわけ?」


その柏木さんとデートなのだよ、綾子クン。


にやっ


「なぁに?思い出し笑い?気持ち悪っ!」綾子が身震いする。


「何とでも言え。俺は今お前の憎まれ口でも何でも許せるんだよ」


「なぁに、いっつもあんたの頭はネジ一本外れていそうだけど、今日は特に酷いわね…」


と言って、綾子ははっとなった。


「もしかして!柏木さんとデート!!?」








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