Fahrenheit -華氏-



午前8時に出社して、俺たちが仕事を終えたのは昼前。


俺はご機嫌に柏木さんを車に乗せると、


「昼飯でも食いに行く?」と尋ねた。女の子の好きそうなお店はいっぱい知ってるから、柏木さんが何を食べたいと言ってもすぐに対応できるようになっているこの記憶力に感謝♪


だけど柏木さんは、


「そうですね…お昼ごはんの前に、少し行きたいところがあるんですが…」と上目遣いに俺を見てきた。


「え??いいけど…どこに?」


「気持ちよくなれるところです」


淡いピンク色のグロスで潤った唇を色っぽくちょっと舐める仕草が、何だかエロかった。


そんなっ!昼間っから!?


でもでもっ!!それはそれでいいかもしれない!



―――――

「いでっ!!!」


俺は思わず声を上げた。


「す、すみません。弱くしたつもりなんですけど…」とお店のお姉さんが申し訳なさそうに顔を上げる。


「も、もすこし優しくしてください…」


「かしこまりました。でも慣れたら、これが気持ちよくなるんですよ」とにっこり笑顔。


「そんなことって…いでででで!!!」



…………と、何やら怪しい雰囲気でございますが……


なんてことない…柏木さんに連れてこられてきたのは、足ツボマッサージ店だった。









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