Fahrenheit -華氏-


20分後……


軽く足首をマッサージしてもらって、「はい。終了です。お疲れ様でした」と言われたときには、何だか足が…と言うよりも気が軽くなっていた。


先にマッサージを終えていた柏木さんは店のロビーのソファにちょこんと腰掛け、すまし顔でお茶を飲んでいる。


「どうぞ」と店のお姉さんに出されたのは中国茶だった。花の香りのするお茶だ。


俺は柏木さんの隣に腰掛けると、彼女と同じようにお茶を啜った。


独特の味だったけれど、まずくはない。


「痛かったけど、何かくせになりそう…」


「さすがドM…」と柏木さんはぼそりと呟く。


な、なにぉう!!って言っても否定できない俺…


柏木さんて案外俺のことよく知ってるのネ。


俺がお茶を飲み終わると、すっと柏木さんは立ち上がった。


「行きましょうか」


「え?お会計…」俺は慌てて尻ポケットから財布を取り出した。


「さっき済ませてきました」とさらりと柏木さん。


「あ、じゃぁ俺の分…」


「いいですよ」柏木さんはにっこり。「誘ったのはあたしですから。じゃぁお昼ごはんは部長がお願いします」


キュン…


なんて男らしいんだ……


って、違~~~う!!


初めてのまともなデートだってのに、調子狂わされっぱなしだなぁ。


しっかりしろよ、俺!!









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