Fahrenheit -華氏-
「いいですけど、会社で間違わないでくださいね」
Yes!!やったぜ!
俺は小さくガッツポーズ。
でもでも…
「俺のことも名前で呼んでくれる??」
媚びるように上目遣いで言うと、柏木さんは俺から視線を逸らした。
遠い目でどこかを見ると、小さく吐息を吐く。
わぁ…面倒くさそう……
何か…俺ばっか好きみたいでちょっと悲しいな。
クスン…
「――――啓、でどうですか?」
彼女の言葉に俺は顔を上げた。
え………?
「“啓人”だと、木下リーダーや麻野さん、桐島さんと同じだから、誰も呼んでない名前で呼びたいんです」
柏木さんは少しだけ睫を伏せると、恥ずかしそうに笑った。
へ!??
「だめ……ですか?」
だめ…
「なわけない!!俺今まで一度も“啓”って呼ばれたことないから、すごく新鮮!!」
いい!!すっごくいい!!
なんか柏木さんの……瑠華の特別になった気がする。
「じゃ、改めて。啓、よろしくね」
瑠華はにっこり笑った。
どキュン!!
やっばい!!キュン死にしそう!!