Fahrenheit -華氏-
「誰かに寄りかかるのって好きじゃないんですよね」
何だろう…唐突に…俺は彼女が望んでいる言葉に気づいた。
それはとても簡単なこと。
「瑠華―――一緒に幸せになろう」
瑠華はちょっと微笑むと、俺の首に回した腕にちょっと力を入れ、「ぎゅ~」と抱き寄せてきた。
しばらくベッドでまどろんでいたものの、動いた分やっぱり腹が減るもので…
俺たちはそのままの流れで一緒に風呂に入ると(瑠華は何故か俺と一緒に風呂に入りたがるんだ♪←ノロケ?)、夕食の準備に取り掛かった。
準備しておいたちらし寿司と、牛肉のたたき、大根サラダをテーブルに並べた。
牛肉のたたきは瑠華がご所望だった。
「何食べたい?」って聞いたら、
「肉」なんて意外な言葉が返ってきて、最初びっくりした。
何ていうか女の子って魚とかが好きなイメージがあったから。
「普段あたしお肉食べないんですよ。特に牛肉。あんまり好きじゃないんで、自分では買わないんです。おいしく食べられる方法ってあります?」
なんて聞かれた日にゃ、がんばるしかないっしょ!
ってなわけで、散々悩んだけど、たたきだったら刺身感覚で食べられるだろうし、瑠華の好きなワインにも合いそうだ。
しっかり酒の好みもリサーチしてある俺。
それもワインだったら白より赤。銘柄や産地には特にこだわりがない、と言っていたからワインは俺が適当にチョイスしてきた。
綺麗な色どりのちらし寿司を一口口に入れて、瑠華は「おいしい♪」と満足げに頬をほころばしていた。
良かった~♪昨日の晩にがんばって仕込んだかいがあるぜ。
問題のたたきを口に入れると、
「ん~~~!」と幸せそうに笑った顔を見て、俺は益々ご機嫌☆
「口に合って良かった♪ってか、食べること好きだったんだね」
「うん、好き」
と答えた瑠華は、いつもの敬語じゃなく、俺は彼女の中にある壁がちょっと外れた気がしてすっごく嬉しかった。