Fahrenheit -華氏-
*考える女*
その晩、独りで眠るベッドが妙に寂しかった。
つい昨日まで瑠華と一緒に、抱き合って、手を繋いで眠っていたのに…
すぐ隣に彼女の可愛い寝顔があったのに。
寂しい。
なんて感情、俺にあったことに驚いた。
恋をして夜も眠れない。
その意味を、俺は始めて知った。
もっと一緒に居たい。もっとキスしたい。もっとずっと抱き合っていたい。彼女の体温を感じたい。
欲望は果てしないな……
そんな自分自身に呆れ果て、俺はやがて眠りについていた。
――――
――
次の日に、瑠華の顔を見ると、それでも昨日の寂しさなんて吹っ飛んだ。
「おはようございます。今日も早いですね」
「おはよう。昨日はあれからゆっくり休めた?」
俺は読んでいた日本経済新聞を畳んだ。
「ええ。おかげさまで」
瑠華は手にしていた新聞をちょっと掲げて、
「お揃い」とちょっと笑った。
キュン、と俺の心臓が縮まる。
今日も一日が始まろうとしている。