Fahrenheit -華氏-
「ねぇ、次はいつ会える?」
女が艶っぽい目で俺を見上げてくる。
う~ん……平日じゃなかったら、と言うか今日が4月1日じゃなけりゃもう一発といきたいところだが。
「100年後?」
俺は軽く笑ってウィンクした。
「ひゃ……100年後って、もう死んでるじゃない!」
女が目を広げて怒った。
「生まれ変わったら会おうぜ」
チュっと音を立てて女の頬にキスを落とす。
「んじゃねぇ~」
俺はネクタイも巻かずに上着を肩にかけると、ひらひらと手を振って部屋を出た。
「ちょっと!!」
と女の怒鳴り声を背後で聞いたけど、無視。
俺に愛や恋を語るな。
その意味すら知らないし、知りたいとも思わない。
気が向くままにたまにヤって。
それが楽。
俺はそう言う男だ。女から言わせりゃ酷い男らしいが。
それで後悔したこともないし、これからも変えるつもりはない。
氷点と沸点を自由に行き来する。
常識に囚われない。
それが俺の生きる道。
ファーレンハイトだ。