Fahrenheit -華氏-
■Surprising incident(異変)
出た!!
俺は若干引き腰。
「い、いや。焼酎ぐらい自分で作る」
「遠慮しないでくださいよぉ」と俺の冷たい態度にもめげずに、「すみませ~ん!」とよく透る軽やかな声で店員を呼んだ。
氷の入ったボウルがすぐに運ばれて、緑川がいそいそと焼酎を作り出す。
グラスに氷を入れたところで、女の子の一人が緑川を呼び止めた。
「あ、緑川さん。いいよ~あたしらが作るし」
「いいですよぉ。先輩方はお喋りしていてください♪」
にっこり笑ったものの、“お喋り”のところが妙に強く発音され、それが棘を含んでいることがありありと分かった。
女の子たちがムッと顔をしかめる。
「緑川さん、部長の好み知ってるの?」
いやいや、君たちだって知らないでしょ?
女の子たちの反撃にもひるまず緑川はにっこり続けた。
「これから知っていくつもりですぅ♪」
つ…強い……
バチバチっ!緑川と女の子たちの間で火花が散った。
こ、怖い……
緑川と女の子たちが睨みあっているとき、俺はこそっと席を立ち上がった。
この際焼酎はどうだっていい。逃げるのが先決だ!
女の子たちの群から、這い出るようにすると目の前に瑠華が居た。