Fahrenheit -華氏-
「え?彼氏??だってさっき部長て……」
「しゃ、社内恋愛なの!社内では付き合ってること隠してて…」
俺は確かに社内恋愛している。そのことを隠してもいる。だけど相手はお前じゃなく瑠華だ!!
そう叫びたい衝動に駆られた。
だけど、
「すみません。話合わせてください」
緑川のあまりにも切羽詰った小さな声に、俺は何も言えなかった。
「いつから…?」男が信じられないと言った感じで疑いの目を向けてくる。
ま、当然だろうね。
「いつからって…三日!三日前からなの!」
おいおい…そりゃすぐバレるだろ…
何だよ緑川。その男から言い寄られてるのか?
って感じでもなさそーだけど…………
何となく…二人の間に流れる空気が、微妙って言うか……
そのとき俺は気づいた。
この男は―――
月曜日に緑川と歩いていた男だってことを。
それすなわち緑川の元カレだ。