Fahrenheit -華氏-
■Buzz(酔い)
アルコール飲み放題付きの三時間。
それが入るときに決められたコースだった。
飲み放題と言うことで、みんな遠慮がない。どんどん酒を注文していく。
騒がしい雰囲気の中、俺はちらりと瑠華を見た。瑠華はオーダーしたビールをマイペースに飲んでいる。
ふと視線を感じて、顔を戻すと、遠くの方に座った緑川と空中で視線がぶつかった。
俺と目が合うと、緑川はあからさまに目を逸らす。
何だよ、あいつは。
さっきの飲み会のノリが続いているからなのか。いい意味でも悪い意味でも騒がしいほど賑やかだ。
「部長も何か歌ってくださいよ~」と隣に座った経理の女の子が俺にタッチパネルリモコンを渡してきた。
「いやぁ俺、最近の歌知らないし」と若干オヤジ的発言にも女の子は気にする様子はなく、「いいですよぉ」なんて言ってリモコンを押し付けてくる。
結局押しに押され、カラオケに来たらよく歌うB'zの曲を選曲。
俺の番になると、みんな目をキラキラ。
この中でどーやって歌うのヨ。
瑠華は、スチャッとタンバリンを用意。
あはっ…用意がいいのね……
相変わらずの表情だったから期待されてるのかどうかも分からなかったけど、気にはなっているようだ。
「佐々木。お前も歌え。デュエットだ」
「えっ?いやですよぉ。B'zは難しいですもん」と嫌がる佐々木に無理やりマイクを押し付け、それでも手放そうとする佐々木の肩に手を回し、首を絞めるような勢いで巻き込んでやった。