Fahrenheit -華氏-

■Fib(嘘)



何かで聞いたか、読んだことがある。


『昼は淑女、夜は娼婦のような女を、男は好む』と…


まぁ言ってる意味も分かるし、頷ける部分もある。


だけど…


これは違う!!!


緑川の顔が近づいてきて、俺は顔を必死に背けた。


犯される!?


「って、そんなこと言ってる場合じゃねぇ!!緑川さっ!ちょっ…どこ触って!!」


俺は慌てた。


緑川の手があらぬ所を探っていたから。


「やめっ…!」


俺は緑川の肩を押しのけた。


もう、こーなりゃヤケ。グッバイ…俺の人生。


「言いか?よぉく聞け」俺は緑川の両腕を掴んだまま真剣な眼差しで彼女を見据えた。


鬼気迫る何かを感じ取ったに違いない、緑川はドキリとした表情で手を緩めた。





「俺の付き合ってる人は彼女じゃない。彼氏なんだ」






「へ……?それって………」


緑川は間抜けとも言える顔で、俺を見下ろしてきた。


「つまり、部長は女の人がダメってことですか?」


「―――そう言うこと……」


言ってて虚しくなった。あばよ。俺の色男人生。






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