Fahrenheit -華氏-
ちょっと触ったのち……ってか緑川、お前何気に扱い上手いな…じゃなくて!!
緑川は驚いたように口を手に当てた。
「ホントだ……」
ふっ……。何故だか悲しくなってきたぜ……
緑川のAV並みのボリュームのある胸を見ても、俺の下半身は反応しなかったってわけだ。
何故か急に瑠華の整った横顔を思い出し、俺は慌てて頭を振った。
今瑠華のことを考えると、元気になるかもしれない。
「言ったろ」
緑川が固まったように、微動だにしなかったので、俺はようやく起き上がることが出来た。
半身を起こし、ちょっと頭を掻く。
「……そーゆうわけだから。……ごめん。君には応えられない」
俺は近くに落ちたブラウスを拾って緑川の白い肩にそっと被せた。
放心したような緑川がうつろな目で俺を見上げてくる。
その顔に、またも瑠華の顔が重なる。
似ているわけじゃないのに。消そうと思っても彼女の顔は俺の脳裏に焼きついて離れない。
あの逸らせない強い視線。
何かを怒っているようで、そうじゃない。刺すように見えるけど、熱がこもった不思議な視線。
瑠華だったら、きっとこう言うだろう。
唐突にそう思い、俺は口を開いた。
「二番でいいから、なんてそんな悲しいこと言うなよ。
そんな受身の女になるな。
もっと自分を大切にするべきだ」