Fahrenheit -華氏-
■Battle(バトル)
優しい嘘をありがとう
それって、俺が男を好きって本気で取ってるワケじゃないってことかな…
ぐわっ!わかんねぇ!!
俺は緑川にいっぱい嘘を言ってきたから、何に対しての嘘なのか分からなかった。
タクシーの後部座席に身を沈め、俺はぐったりと背を深く預けた。
タクシーは六本木に向かっている。
実は緑川のマンションを出るとすぐに携帯の電源を入れた。
瑠華からメール受信があり、開いてみると、
“佐々木さんに送ってもらいました。家についてます。”と短いメールが入っていて、ひとまずはほっと安堵した。
メールがあったのは一時間も前。
俺は慌てて瑠華に電話を掛けた。
だがしかし…
携帯は繋がらなかった。
瑠華からの電話を途中で切ってしまった。
怒ってる?それとも不安になってる―――??
瑠華に限って、そのどちらもない気がした。
瑠華は俺を受け入れてくれたけど、俺ほどの気持ちを抱いていてくれるわけじゃなさそうだから。
それでも電話が繋がらないことが、
妙に不安を掻き立てる。