Fahrenheit -華氏-
何とか部屋に上げてもらうと、俺は通例のようにリビングに通された。
テーブルの上にはビールの缶二本、それとウィスキーのボトルとグラスが置いてあり、蓋の開いたタバコやライターが乱雑に置かれていた。瑠華には珍しいことだった。
ソファの上に茶色のひざ掛けが、放ってあり少しずり落ちている。
だけど、そのひざ掛けの端からピヨコが顔を覗かせていた。
ぴ、ピヨコ~~お前無事だったんだな!!
って言うかひざ掛け掛けてもらって、俺んちより優遇されてない??
瑠華はどうやら俺があげたピヨコを大切に扱ってくれているようだ。綿の飛び出た悲惨なピヨコを想像してたから、ちょっと一安心。
瑠華は風呂あがりなのだろうか、白いシャツ一枚だけを羽織っていた。
長い髪もまだ少しだけ濡れていて、そこから芳しいシャンプーの香りが漂ってきた。
本来なら、すぐに襲いたくなるような…って言うか間違いなく襲ってただろうけど、
さすがに今は俺の中でブレーキを掛けている。
だけど素直な俺の視線は、すっと伸びた綺麗な太腿に釘付け。
瑠華がおもむろに俺を見上げてくる。
はい!すみません!!俺が悪かったですっ!
何も言われてないのに、すでに謝りモード。
だけど瑠華は俺の気持ちとは裏腹にすっと手が伸ばしてきて、俺の頬を包んだ。
相変わらず冷たい掌だった。
瑠華は探るように目だけを上げ、そしてちょっと眉をしかめた。
「大丈夫ですか?ここ、引っかかれてる」