Fahrenheit -華氏-
ひ、膝枕!!
って突っ込むところはそこじゃない!
「緑川にやきもち!?」
瑠華は長い睫を伏せ、目を閉じた。
「緑川さんと何かあったんじゃないかって、ちょっと不安でした。
誰かのことを考えて不安になるなんて嫌だったのに。
誰からの言動で振り回されるあたしが嫌だったのに。
でも、どうしようもなく気になる。こんな自分嫌なのに…」
囁いた声は不安そうに聞こえなかった。
でも聞こえなかっただけで、無理に強気に言っているように感じる。
俺は今まで勝手に、瑠華は俺に無関心なんだと思っていた。
付き合ってもそれは変わらなく、俺の些細な行動の奥深くを知ろうと思わない女だと思っていた。
俺にはそれほどの影響力があるとは思えなかったから。
俺は瑠華の額にそっと手をやり、前髪を掬った。
「…ごめん。心配かけて。ちゃんと話すよ。緑川とのこと」
瑠華はちょっと目を開いて、寂しそうに笑った。