Fahrenheit -華氏-

■Way(歩み)



俺がそれを思いついたのは本当に突然だった。


夜明け前に目が覚めて、それとほぼ同時に閃いた。


「そうだ軽井沢、行こう」


以前に見たJR東海のCM“そうだ京都、行こう”調に。


ご丁寧にも、映画サウンドオブミュージックでジュリーアンドリュースが歌っていた“わたしのお気に入り”を編曲したメロディも頭に流れる。


あれはあの映画で流れる若かれしときのイケメン俳優クリストファー・プラマー歌う“エーデルワイス”の次にお気に入りだ。


ってそんなマニアックな話はどうでもいい!


俺は隣で眠る瑠華をゆさゆさと揺すった。


「瑠華ちゃん、軽井沢行こう!」


俺の声に瑠華はうっすらと目を開け、眠そうに


「…はぁ?」と唸るように口を開いた。


「軽井沢!行こう!!」


瑠華が思い出の女の子だと決まったわけじゃない。


たとえ違ったとしても、あの場所が俺の恋のすべてのはじまりだ。あのときの気持ち以上に大切に思っているこをと、俺は彼女に伝えたかった。


「……軽井沢…?行ってらっしゃいぃ」


瑠華は布団から手を出すとひらひらと振った。


寝ぼけてる瑠華も可愛いけど、俺一人じゃ意味がない。


「君も一緒に!行こうっ!!」


俺は無理やり瑠華を起こすと、布団を跳ね除けた。







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